PC玄人の方ほど「電源はあまりケチるな」と言います。
CPU、マザーボード、グラフィックボードといった話題性抜群の派手なパーツを陰で支えている電源は、とても重要なパーツです。電源ユニットがどんな役割をしているのか、少し詳しくお話したいと思います。
電源ユニットの重要性を知ろう
電源ユニットの役割
電源ユニットには、コンセントから送られる交流の電流を直流に変換する役割があります。そして、その電力をパソコンの各パーツに供給しています。
なぜ直流にする必要があるのでしょうか?
交流電流は電圧がゼロになる瞬間があり、プラスとマイナスも常に変化し続けています。しかし、PCのパーツ内部にある半導体素子は、電圧がゼロになると作動しなくなります。
頻繁に電圧がゼロになるたびに半導体が止まる、動く、を繰り返すので制御機構が複雑化し、速度が落ちてしまいます。そのため安定した直流電流に変換する電源が必要になるのです。
安物電源の恐怖
少し前に「動物電源」という通称で呼ばれる電源が流行したことがありました。某メーカーの販売していた電源シリーズで、品質が悪いかわりに非常に安いことが特徴で、シリーズの商品名が動物の名前であることが多かったために「動物電源」と呼ばれていました。そして、この動物電源を搭載したPCが故障する事案が多発しました。
最悪なことに、マザーボードを道ずれにして故障するパターンが多かったらしく、そのころから自作PC界隈では「電源はあまりケチるな」と言われるようになりました。
安定の供給=安定のPC
PCを自作すればすぐに気づくことなのですが、マザーボード(その上に乗っかっているCPUやメモリ)、グラフィックボード、HDD、ファンといったPCパーツは全て電源ユニットに直つなぎします。ですから、電源ユニットの電気が不安定だと、各パーツに直に影響が及ぶことになります。
品質の低い電源ユニットは、電流の変換をスムーズに行えません。各パーツへの電力供給が不安定になると、電力供給を受けているパーツにダメージを与えていきます。
「動物電源」のケースでいくと、多数のパーツと接続しているマザーボードに特に負荷がかかり、マザーボードの故障まで誘発してしまったようです。
電源ユニットは見落としがちですがとても重要なパーツと言えます。
高品質の電源ユニットを選択することがいかに重要かがお分かりいただけたかと思います。
そうはいっても、どれが高品質かわからないという方も多いと思います。その場合は、有名メーカーのものをまずは選択するというのがベストと言えます。
電源ユニットの選び方
ではどのような項目に注意して電源ユニットを選べば良いのかを解説します。
出力容量
電源ユニットは商品によって送れる電力に限界があり、総出力容量をワット(W)で商品説明に記載しています。
電源ユニットの総出力容量を超える電力が必要なPCを動かした場合、電力の供給が不安定になり、突然シャットダウンする恐れがあります。
高性能なCPUやグラフィックボードを搭載するゲーミングPCでは、通常のPCよりも高い電力を必要とします。そのため、より容量の大きな電源ユニットが必要になります。
気を付けていただきたいのは、グラフィックボードやCPUのフルパワー稼働時の電力を元に容量を決める必要がある事です。負荷の高いゲームでは各パーツの最大値近くまで電力を消費するので、通常利用のPCと違って最大消費量で考慮する必要があります。
定格出力
電源の出力容量にはピーク出力と定格出力の2種類が記載されていることがあります。定格出力は安定的に出力できる電力のことで、ピーク出力はPCが起動する際に短時間だけ全てのパーツが同時に動作するために必要となる電力を供給する能力です。
定格出力が不足していない場合は、ピーク出力も不足することはまずないので電源の購入の際には定格出力の方を重視してください。
容量はいくつのものを買えばいいの?
電源が電気を変換するには出力が一定の範囲内にあることが必要です。総消費電力が容量の20~70%程度の範囲に収まるようにするのがベターです。
目安として搭載のゲーミングPCの場合は、i7-7700k+GTX1080の構成でゲーム時に200~300W、一般的な使用時で100~150Wほどなので最低でも400W以上の電源は必要になると考えてください。
また、電源容量の80%を超えた消費電力で長く動作すると、電源の寿命が大幅に短くなる恐れがあるので注意してください。
電力効率を考える場合はゲーム時の消費電力が電源容量の50%程度になる時が最も電力効率がよくなります。
ゲーム時に300Wを消費するなら、550~600W程度の電源を搭載すれば最も電力効率がよくなり
- 電気代が安くなる(これは微々たる額ですが)
- 電源への負荷が少なく長持ちする
といった利点を得られるので、一考してみてください。
電力変換効率
電源ユニットの役割はコンセントの交流電流を直流電流に変換することと、PC内の各パーツの規格に合わせた電圧レベルに変換し供給することです。
この際に交流電力から何パーセント分を各パーツへの供給電力へと変換できるかを電力変換効率と呼びます。この変換効率が優秀なほど、消費電力と電源への負担をを抑えることが出来ます。
80PLUS認証とは
BTOやPCパーツショップのサイトで電源ユニットを見ると、80PLUSという文字をよく目にすることが出来ると思います。80PLUSとは、電力変換効率が80%以上の効率である製品に与えられる認証です。
変換効率が悪いということは、電力の変換の際に電源ユニットそのものが無駄な電力を消費するということです。これは、電気代だけの問題ではなく、無駄に消費された電力は熱源にもなるというのが問題です。
熱は電気製品の最大の敵ですので、
- 動作が不安定になる
- 電源を冷やすために回転数の高いファンを搭載する必要が出て、騒音の原因になる
- 熱により電源自体の寿命を縮めてしまう
といった問題につながる恐れがあります。その点、変換効率の高い電源では無駄な消費電力が少なくなり、発熱も少なくなります。
80PLUS認証のグレード
80PLUS認証にも細かくグレードがあります。
STANDARD→BRONZE→SILVER→GOLD→PLATINUM→TITANIUM
と、80%以上からさらに効率がよくなっていくにつれグレードが変化します。
消費電力/最大出力容量が50%の場合で、
- STANDARD→80%
- BRONZE→85%
- SILVER→88%
- GOLD→90%
- PLATINUM→92%
- TITANIUM→94%
となっています。
どのグレードがいいの?
消費電力が300Wの場合だと、STANDARD電源で375W、BRONZEで353W、GOLDで333W、TITANIUMで319Wになります。
STANDARDとTITANIUMでは56Wもの差が生じています。GOLDとTITAMIUMではわずか14Wの差になります。
TITANIUMはハイエンド向けの高価な商品が多く、本体価格が大きく上がってしまいます。本体価格の差を考えれば、コスパの点ではGOLDが優秀であることがわかります。
まとめ
電源ユニットを購入する際の選び方
- 定格出力の出力容量に注目して、購入すること!
- 容量は余裕をもって選択する方がより良い
- ハイエンドグラフィックボードを複数枚搭載するなどのウルトラハイエンド用途の方はTITANIUM
- シングルボード運用のミドルからハイエンド用途の方はGOLD
- 補助電源の必要ない省電力ボードを搭載するなどのローエンド用途の方はBRONZE