乱暴な言い方をすると、PCパーツにおけるリネームとは、旧製品と内容に大きな変更がないにも関わらず、商品名だけを変更(re-name)し、新商品として売り出すことです。
実際にはまったく同じものを名前だけ変えることは珍しく、大抵は多少の改良は加えてリネームするので、詐欺まがいの販売手法というほどのものではありません。しかし、購入タイミングによっては、旧製品の方がお買い得になることが多いので、新商品がリネームなのかどうかをチェックするようにするとお得に買い物ができるかもしれません。
RX580とRX480の性能差
現在AMD社が販売しているGPUの中で主流となっているRX580ですが、このGPUは旧製品であるRX480のリネーム品と言われています。
実際に性能を見比べてみましょう。
RX480 | RX580 | |
---|---|---|
製造プロセス※1 | 14nm | 14nm |
シェーダー数 | 2304 | 2304 |
演算ユニット | 36 | 36 |
ベースクロック | 1120MHz | 1257MHz |
ブーストクロック | 1266MHz | 1340MHz |
TDP※2 | 150W | 185W |
※1製造プロセス:PCパーツの世界では、半導体の製造における、製造する半導体の回路線幅を指すことが多い。CPUを構成する半導体は、その回路線幅が微細であればあるほど、半導体チップの小型化や、速度性能の向上が実現しやすくなる。
※2TDP:Thermal Design Powerの略。 日本語では「熱設計時消費電力」と訳されている。 CPUなど半導体の消費電力を表す指標のひとつ。ヒートシンクや冷却ファンなど、CPU冷却機構の設計時に使われる想定消費電力(発熱)をあらわしている。
一見、RX580の方が性能アップしているように見えるが?
製造プロセス、シェーダー数、演算ユニットに差がありません。なのでまず、チップとしては、RX480とRX580は同じ性能であることがわかります。
違いはベースクロックとブーストクロックです。RX580の方がクロックが高いため、実行性能では約6~12%ほど高くなるでしょう。
「性能はアップしてるなら問題ないのでは?」と思いがちですが、ここで注目しなければならないのが「TDP(消費電力)」です。消費電力でもしっかりRX580の方がアップしていますね?同じ性能のチップに高い電力をかけてクロックアップし、性能を伸ばしているのです。
このような性能アップの方法に、見覚えがありませんか?そうです、オーバークロックです。つまりRX580とは、RX480をオーバークロックしたものなのです。ならば、自分でRX480をオーバークロックすればRX580とほぼ同じになるということです。
RX580とRX480の価格差
性能的には同じと言っていいRX580とRX480ですが、価格的にはどうでしょうか?
それぞれの発売時価格では、RX580が約35,000円、RX480が30,000円でした。円相場の変動の影響もありますが、リネーム製品で性能に変化がなくても特に価格を安くしているわけではないことがわかります。
また、RX580の発表時にはRX480の在庫処分が行われたため、安いショップでは20,000円を切る価格で販売されていました。性能に差がないのに、35,000円と20,000円という価格差があったわけです。
RX580がリネーム商品であることをいち早く確認していたPC上級者達は、処分価格になったRX480を購入していたので大分得をしました。
なぜリネームするの?
なぜ、メーカーはリネームなどという、性能差のない商品を新製品のように売り出すようなことをするのでしょうか?
一番大きな理由は、PCメーカーやグラフィックボードメーカー(ASUSやMSIといった供給されたGPUを使用して、グラフィックボードを製造するメーカー)が必要としているためです。AMD社のRXシリーズからいつまでも新しい商品が出ない状態が続けば、市場の話題はNvidia社のGeForce一色になってしまいます。それではRXシリーズを搭載したPCやグラフィックボードの売れ行きは大幅に落ちてしまいます。
それを少しでも避けるために、同じチップでも一部の仕様を変更する事で新商品とし、新発売としてキャンペーンを行うことで売れ行きが増えることを、PCメーカーやグラフィックボードメーカーも望んでいるということです。
それってメーカーの都合だよね?
確かにそうです。ただ、RX580やRX480といった名前はブランド名であり、販売促進を狙ってつけられているものです。そのため、リブランドして販売するというのはGPUだけではなく、様々な製品においても行われています。ライバル関係にあるNvidia社のGeforceシリーズも過去にリネーム製品は販売してきました。
性能や価格にこだわりの強いヘビーユーザーなら、しっかりスペックを比較して、リネームであることを了解したうえで検討するでしょうし、あまり難しいことは考えずに、気軽に購入したいライトユーザーにとっては、厳密な性能はそれほど重要ではない。という考えからです。
しっかりスペックを確認しよう
とはいえ、「せっかく高いお金を出してゲーミングPCを購入するんだから、なるべくコスパのいいものが欲しい」というのは全ユーザー共通の正直な気持ちです。
新商品が発表されたら、まずネット上の記事を検索してスペックをしっかり確認しましょう。これによって、新製品の性能に納得して購入することが来ますし、もし新製品がリネーム品であると判断できる場合は、旧製品のセールを狙うことでお得に買い物ができるかもしれません。